ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2019.5.12 17:13皇室

有本氏「主導権を奪い返す」って、何と陳腐で空疎なセリフ。

しつこいようですが、有本香氏のネット記事
【有本香の以毒制毒】について、
まだまだ言い足りないことがあるので続けます。


有本さんはこの朝日新聞批判をした記事の最後で、
こう述べています。

一方、メディアはここへ来て、「女性・女系天皇」の話題で
騒いでいるが、そもそも、こんなデタラメな論の立て方もない。

 「皇統安定のため」とのおためごかしをメディアは
一様に言うが、皇統とはイコール男系(父系)の血筋だ。
それが一度、「女系」に代われば、その瞬間、今日までの
皇統の終わりを意味する。
それで、「持続可能」とか「安定」など、はなからあり得ない。

 生真面目な保守派の人々は「国民の多くに『女系』の意味、
危険性が理解されていない」と嘆くが、
問題はそれよりも、「女系」という、政治的レトリックが
当たり前に用いられ、一般化されつつあることである。

 「女系」には天皇の血統はない。まずは目を覚まし、
議論の主導権を奪い返すことから始めなければならないのである。


もはや「男系継承」が自明のことであるかのように
思っているようで、なぜ男系の血筋でないと
「皇統の終わり」を意味するのか、全く記していない。
おそらく自称保守論壇ムラの身内に向かってしか
語っていないのだろう。
というか、そのムラ人しか視界に入っていないのだろう。
そんなわけだから、締めくくりに「まずは目を覚まし、
議論の主導権を奪い返すことから始めなければならない」
などと、陳腐で空疎なスローガンめいたセリフしか出てこない。
有本さん、いつの間に活動家になったの?

女系天皇は政治レトリックなどとレッテル貼りする前に、
自分たちのムラの縄張り争いをけしかける前に、
国体とは何か、国柄とは何か、自分の頭で一度
考えてみたらどうか。

第一、上皇陛下や天皇陛下を、「男系の血筋だから尊い」と
思って、あなたは崇め奉っているのですか?
私は、男系であることより、上皇陛下がこれまで
なされてきたことにありがたみを感じる。
また天皇陛下に対しても、国民に寄り添ってこられた
上皇陛下の姿勢を真摯に受け継ごうとされているお姿に
何よりありがたみを感じる。

そこに絶大なる信頼を寄せているし、
かつ「やっていただいている」という
感謝の気持ちが自然と芽生えてくる。

それこそ今の時代の天皇と国民の理想的なあり方だと思う。

同時に、こうした個人の感情とは別に、
「天皇」という象徴を頂く立憲君主制のこの日本のありようは
じつに素晴らしいと考えている。
権力欲にまみれた独裁者が出現しにくい、
また独裁政治や専制政治が行われにくいシステムだ。
これは連綿と続いてきた歴史の、
先人たちの知恵の結晶でもあると思う。
だとするならば、これを自分たちの都合や思惑で変えてはならない。
次の世代にも受け継いでいかなければならない。
そして時代によって天皇の役割が変わってきたように、
これからも時代に即してしなやかに変わっていけばいい。

昭和天皇は側室を持つことを拒んだ。
上皇陛下は民間から妃を選ばれた。
その妃である上皇后陛下はお手元でお子様を育てられた。
今の天皇皇后両陛下は令和の御代で何をどのように
変えられるだろうか。


少しずつ、少しずつ、時代に合わせて変えていきながら、
先人たちの知恵の結晶である「この国のかたち」を続けていこう。
いまや自衛隊にだって女性艦長や女性パイロットがいて活躍する時代。
男だから、女だからという制限はなくなりつつある。
だったら女性が天皇になって何がダメなの?
女性・女系天皇を支持する多くの国民が自然に、
常識的な感覚でそう思っている。

あえて言うなら、これこそ本来の「保守」的な考えだ。

なのに男系の血筋がなければ皇統は終わるって?
女系天皇は「政治レトリック」だって?
「主導権を奪い返す」って?

あなた、一体何の話をしているの?

天皇のなさりように少しでもありがたみを感じているなら、
血統にこだわって皇室を消滅させることだけは
何としても避けたいと思うはずだ。
そもそも男系継承って、伝統でも何でもない。
血統にこだわって皇室を消滅させようもんなら、
有本さんを含め自称保守論壇ムラのムラ人が毛嫌いする、
左翼の思うツボですよ?

いやいや「旧宮家系男系男子を」というかもしれない。
一体どこにいるの?
あなた、会ったことあるの?
誰かがそんな意志を示している話など
聞いたこともないけれど。
そもそも、そういう方々がいたとして、
「男系の血統だ~。ありがたや~」って思うわけ?
まったく不自然で気持ち悪い。

有本さん、あなたがやっていることは、結局、
自称保守論壇ムラでの自分の支持集めに過ぎません。
要するにこの国のためという「公」ではなく、
「私」のためにしか、語っていないのです。
しかも、男系で続いてきた血統こそが尊いのだという、
女性蔑視おじさんたちにチヤホヤされて
何が嬉しいのか、私にはさっぱりわかりません。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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